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シンプルスキンケアの提案、物理的刺激が肌老化に与える影響について

生体バリア研究

肌は表面から「表皮」「真皮」「皮下組織」の3つの層に分かれており、表皮の最外層である角質層は、0.02mmの厚さしかありません。これまで、肌への摩擦や過剰なスキンケアはデリケートな角質層を傷つけると言われていましたが、実際にどのくらいの物理的刺激(以下、刺激)が肌に影響を及ぼすのか検証されていませんでした。そこで、肌に影響を及ぼす刺激の量と、刺激を受けた肌の変化について、最適なスキンケア方法の提案につなげるための検証を実施しました。

肌に刺激を加えると細胞生存率が減少し、肌老化を促進するIL-8(炎症性因子)が増加することを確認

肌を模した3D皮膚モデルへの応力時間(刺激を与える時間)と応力刺激が増えると、細胞生存率が減少することを確認しました。さらに、加齢によって増え肌老化を促進すると言われているIL-8(炎症性因子)も、応力時間と応力刺激が増えるほど増加することを確認しました。

摩擦や過剰なスキンケアが肌に与える影響の検証

研究1.細胞生存率の検証

[試験方法]

設定した下記条件に従って、3D皮膚モデルの角質層表面をスパチュラで押しながら応力刺激(今回は回転摩擦)をかけ、細胞生存率を測定しました。

条件
・サンプル1(刺激なし):製剤1種のみ塗布、応力時間・応力刺激は加えない

・サンプル2(刺激なし):製剤4種を塗布、応力時間・応力刺激は加えない

・サンプル3~5(刺激あり):製剤1種のみ塗布、またサンプル名の数字に比例して、応力時間と応力刺激が増える

・サンプル6(刺激あり):製剤4種を塗布、サンプル5と同じ応力時間と応力刺激を加える

図1.応力刺激に対する細胞生存率の比較

細胞生存率は、サンプル3~6で明確に減少しました(図1)。また、サンプル1・2で細胞生存率の大きな変化はないため、細胞生存率の減少には、応力時間と応力刺激が影響していると考えられます。

研究2.IL-8の増加の検証

[試験方法]

研究1と同じ条件を用い、3D皮膚モデルを粉砕しリアルタイムPCR(1)にて、炎症性サイトカイン(2)の発現評価を実施しました。

図2.IL-8の発現変動の比較

IL-8は、サンプル3~6で増加しました(図2)。また、サンプル6では同じ応力時間を加えたサンプル5と比較して大きく増加しました。そのため、IL-8の発現変動には、応力時間と応力刺激だけでなく製剤の数も影響していると考えられます。

研究1・2の検証結果から、応力時間と応力刺激は、細胞生存率の減少とIL-8の増加に関与していると分かりました。また、IL-8には、表皮細胞に添加すると老化細胞を増加させ、バリア機能を低下させるという報告もあります。そのため、応力時間と応力刺激が増えると肌の老化を促進する可能性があると考えられます。

シンプルスキンケアは美しい肌を保つ

検証の結果、3D皮膚モデルへの刺激が増加するほど細胞生存率が減少することが分かりました。また、IL-8は、刺激が増えるほど増加することが分かりました。IL-8には、肌の老化を促進させる働きがあることから、肌に刺激を与えると肌老化を促進する可能性があると考えられます。当社は今後も、スマート“ライフ”サイエンスという研究方針のもと、常識にとらわれない「新しい」価値を生みだす研究を実施してまいります。

【用語解説】

(1) リアルタイムPCR

 蛍光色素を用いてリアルタイムでかつ定量的に、発現している遺伝子を解析できる手法。

(2)サイトカイン

 炎症の重要な調節因子で、細胞から分泌される低分子のタンパク質の総称。

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URL:https://corporate.shinnihonseiyaku.co.jp/rd/advantage/